シックスハット(創業道場)

2011/08/06 | カテゴリー: 講演会, 起業全般, 創業プラザあいち | タグ:

おはようございます。小坂です。

昨日は創業プラザあいちの創業道場でした。テーマは「製品・サービス」。タイトルだけ聞くと全然面白くないですね。内容は、マーケティング理論4Pのうち、製品。さらにその中でも新商品開発に必要な発想法の体験をしていただきました。 

写真は会場風景。

創業道場

創業道場

(ホワイトボードにはアイデア出しの結果が所狭しと書かれています)

6名×2チームで、それぞれアイデア出しをしていただきました。テーマは「新しい結婚相談所」。講義の時間は1時間で、実質40分の中でアイデアをまとめていただくという、ちょっと詰め込み気味のスケジュールで実施しました(そこに意味があるのですが)。

「シックスハット」という手法で、頭を切り換えながら、様々な観点で意見を出すワークです。スタンフォード白熱教室で実施されているのを見て、これが起業家には効果的だし、創業プラザあいちのみなさんにも必要だと確信し、今回のワークで採り入れてみました。

●シックスハットとは?

シックスハットとは、エドワード・デ・ボノ教授が開発した手法で、アイデアを考えるときに、6つの帽子を被ったつもりで、6つの観点で意見を出すのです。それぞれ5分ずつを持ち時間にしました。

今回は、次の順番でやってみました。各プロセスで、全員が同じ帽子を被ります(被った気持ちになってアイデアを出す)。

1.白い帽子・・・客観的なデータ、統計、事実など(ここでは判断、提案などをしない)
2.黄色い帽子・・・ポジティブな視点。プラス思考、アイデアの利点など
3.黒い帽子・・・ネガティブな視点。リスク、懸念など
4.緑の帽子・・・革新的な視点。新しい代替案、斬新なアイデア、リスクを乗り越える方法
5.赤い帽子・・・感情的な視点。直感、好き嫌いなど
6.青い帽子・・・まとめ的な視点。結果のまとめ

最初の「白い帽子」のときに、意見をホワイトボードに書くスピードが少々ゆったりしていたので、加速するように促して(一人が記入するのではなく、複数の人で同時に記入していく)、時間も少し長めにしました(10分にしました)。このプロセスが個人的には圧倒的に不足していると感じることが多く、今回は事前課題としました。その結果を、ワーク時に書いてもらったというわけです。

黄色い帽子ではちょっと意見が停滞していた様子ですが、黒い帽子になると、とても分かりやすいですね。意見がサクサク出てくるようになりました。

そして緑のあたりで加速してくるのがわかりました。だんだんホワイトボードのスペースがなくなっていくのを両チームとも感じていたようです。

赤い帽子で意外な感想が出てきました。それは、「すっきりした」「ストレスがたまらなかった」というものです。なかなか根拠がない意見というのは発言しにくいものです。ところが、根拠のない好き嫌いも言えるということで、みなさんスッキリしていた様子です。この「赤」のときは、実に表情が活き活きしていましたね。これは面白い発見でした。

最後の青い帽子ではまとめをしていただきました。ホワイトボードにどのように記入したかによって、まとめるのが容易かどうかも変わってきます。また、時間内にまとめる力も要求されます。6人のメンバーを統率するリーダーシップを誰が発揮するかも、ここでは重要となってきます。リーダー不在だと、ここに時間がかかってしまうでしょう。

 

●シックスハットのワークで感じたこと

1.期待以上の成果

シックスハットは、予想以上の成果でした。参加したみなさんの中で、何かが変わった様子がはっきり分かりました。講座終了後に大半の方とお話ししましたが、40分の体験をしたことで、今後の個人レベルのアイデア出しや会議に活かせるという意見が出ました。講義をするときは、講義の内容を良かったと思っていただくことと、それを聴いて具体的なアクションを起こしていただく2点が私の目標で、この2つが感想で出てくれば「大成功」だと考えています。そういう意味では、今回の講座は大成功と言って良いでしょう。

講座終了後、起業家のみなさんに動いてもらうことで成果が出ますし、それがインキュベーション施設としての価値を高めることができます。こういった能力開発系の支援というのがベンチャー育成では大事ではないかと最近強く感じています。来年度以降に向けて、他にも使えるツールがないか、探していきます。

2.葛藤

考え方を切り替えるのに苦労していた様子が見ていて分かりました。例えば、緑の帽子(革新的な視点)のときに、黒い帽子(ネガティブな視点)の意見が出てしまうのです。誰かがアイデアを出した直後に、否定するわけですね。ネガティブな意見は基本的に出やすいので、アイデアを膨らますときには、ネガティブな意見はどこかで一箇所にまとめて出すようにした方が良いかと思います。みなさんどうしても黒い帽子になりがちですが、それを抑えていただくのが、このワークの一つの目的でもあります。

実際に、「ある色の帽子を被っている時間に、違う帽子を被っている人がいました。そのときにどう対応するか?」という感想が出ました。これは、相当意識してワークに参加していただいたことを示しており、私としてはこれもまた「大成功」です。すごく「入り込んでくれた」ことを嬉しく思います。

また、こういった事態が発生したときに「あれっ?今はそういう意見を出す時間じゃないよ」という表情をしていた方もいました。その姿を見て、私はホッとしたのです。講座・ワークの意図が伝わっていましたね。

ネガティブな意見、誰かの意見を否定する意見が出たときに、「いま緑だよね~」などとソフトに言える(警告する)関係が理想ですね。会社内で上下関係がハッキリしている状態だとこれは相当困難になりますが、訓練すれば何とかなるのではないかと思います。

3.スピード感、躍動感

多くの方が、「時間がない」「もっと話がしたかった」と感じたようです。その一方で「今回は短時間で意見がまとまったので、とても気持ちよかった」という感想が出ています。

時間がもうちょっとだけほしいというのは、過ごした時間に満足している証拠でもあります。チームでのディスカッションが気持ちよかったのでしょう。逆はいけません。「いつ終わるのかな~」「ゴールが見えない」と思ってしまうと、ワークやディスカッションに対してとてもネガティブな感情を持ってしまいます。みなさん会議が嫌いなのは、おそらくこれが原因ではないでしょうか。

今回は、このスピード感を出すために、「白い帽子」の部分を事前課題にしておきました。あらかじめ当日までに統計やデータ、情報を用意していただき、そこから議論を開始したのです。もちろんゴールも伝えてありますので、その目標に向かって全員が意思統一できたものと思われます。

スピード感の考え方は、個人の時間管理にも使えます。私の今の仕事のスタイルの場合、電車での移動時間(瀬戸-名古屋で片道合計50分というのが多い)をどう使うかが、自分の時間を増やせるかどうかの鍵を握っていると考えています。ですから、その時間で可能なタスクを必ず持参するようにしています。最近であれば原稿書きであったり講座の企画立案であったり、本を読む時間に充てたりしていました。

自分の時間を有効活用してほしいことと、他者の時間も無駄にしないように配慮してほしいという思いが伝われば良かったかなと思います。

4.チームワーク

これは顕著な成果がありました。ワークを行った後、むしろ1時間の講座の時間よりも長い時間、参加者同士で様々な意見交換をしていたのです。同じ時間、特に、チームの中で満足を感じた時間を過ごしたことで、結束が強くなっていくのを感じました。

私は今回の短時間でのワークを通じて、「エキサイティングな時間」を感じてほしいと思っていました。ワークが終わる頃には少々息が切れるくらい、体を動かしながらディスカッションをしてほしかったのです。これは概ね満足しています。スペースの都合で、動き回れる状態でなかったのが残念でしたが。

「今日のワークを、ぜひ自分の事業分野でもやりたい」という方が早速2名ありました。これはメンバーに対する期待と信頼があってのことでしょう。これはたいへん嬉しいですね。

また、意気投合した2名が20時までお互いの事業をブラッシュアップしあっていました。創業プラザでは片方の事業を中心に話したので、そこから場所を移して、もう片方の事業を議論しよう!という話になったとのこと。

もうこういう動きはたまらないですね。本当に嬉しいです。

お互い切磋琢磨しながら伸びていく関係が理想です。耳障りの良いことばかりを言っていても事業がうまくいくわけではありません。本気で仲間のことを考えてあげられる人達の輪が広がっていくことを強く望みます。

5.改善点・反省点

アメリカで広がっているフレームワークを日本に持ち込むので、カスタマイズが必要だと感じていましたが、創業プラザあいちでの講座に限定して言えば、次のようなことが改善できるかと思いました。

(1)環境整備(ワークの進め方の指示)・・・与えられた環境の中でワークが進んでいきます。これはある程度コントロールした方が良いと思いました。例えば、机の配置について何も指示をしませんでした。その結果、椅子に座ったまま話をする方もありました。これは「スピード感」が出ない一つの原因になります。広いスペースに、机から遠い位置にホワイトボードを置くことにより、かなり時間削減ができたのではないかと思います。また、ホワイトボードに記入する人を、両チームとも最初は一人に任せていました。これでは時間の無駄です。最初はそれぞれ持ち寄った情報を書くわけですから、それこそ全員が動いて書くのがベストです。おそらくなぜそれをしなかったかというと、「ホワイトボードのペンの本数が3本だったから!」という環境要因が大きいと思います。見かねて「一人で書いていては時間がなくなりますよ」と言ってしまったのですが。

また、「帽子の色と同じペンの色があればよかった」という意見も出ております。私はそういう要求はその場で出るかと思っていたのですが、みなさん控え目で、言いにくかったのでしょうね。スタンフォードの場合、ペンをはじめとして、いろいろなグッズが既に教室に置かれています。こういうのはたいへん意味があるなあと実感しました。次回以降に活かしたいと思います。

(2)時間配分と行程の見直し・・・ワーク方法の指示と合わせて、前半部分を長めに取った方がよいと思いました。また、6つの帽子でしたが、TVで行っていたのは少し異なる方法で、もう少しプロセスを追加していましたので、それも検討しなければと思います。具体的に言えば、白い帽子の後に、一つ行程を追加することを次回以降は検討しています。また、最後の青い帽子の直前にも一つ入れなければと思いました。その分時間は長くなってしまいますが、仕方ありませんね。

 

●最後に

シックスハットの他にもアイデア出し、発想法のツールはあるので、それも10種類紹介しました。ブレーンストーミング、ブレーンライティング、オズボーンのチェックリスト、サーチアンドリアプライなどです。それぞれ説明資料を配付しました。これらの中でもシックスハットを使って創造力を磨く、自分の頭をコントロールすること(いわば「脳内矯正」)を体感していただくことが、最も劇的な意識変化を生むと確信したので、今回はこれをテーマにしました。

上記のフレームワークが存在することは何となく知っていても、どう活用すればよいか、どのような場面で使うか今一つピンときていなかったので私もあまり活用し切れていなかったのですが、「起業家のみなさんの能力開発に使える!」と閃いてから、はっきりと使い道が見えてきました。

もちろん、どんな場面でもフレームわークが有効に機能するというわけではなく、下準備や参加者の関係づくりなども重要です。今後、起業家脳を養成するためのプログラムを模索していきます。最も効果的なプログラムを考えたいものです。特に大学生など、若い人に対して実施したいですね。何年かかるかわかりませんが、少しずつ形になっていけばと思います。


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