2006/06/07

No.011 一般的な契約書の構成

●一般的な契約書の構成

General Outline.

1.Title
2.Introductory paragraph, including the parties and the date of agreement.
3.Recitals or a Statement of Background Facts.
4.Definitions
5.Core substantive provisions, including consideration, conditions, closing.
6.Representations, warranties, covenants, indemnities, guaranties, releases.
7.Events of default and remedies.
8."Boilerplate"
9.Signature Blocks.
10.Exhibits and Attachments.


一般的な契約書の構成
1.タイトル、見出し
2.導入段落(契約当事者、契約締結日など)
3.背景となる事実についての詳述、言明
4.定義
5.中心部分となる実体条項(対価、条件、締結悪、の完了など)
6.表明、不動産契約、証書契約、損害賠償、保証、権利放棄
7.債務不履行もしくは期限の利益喪失事由と賠償請求(法的救済)
8.定型条項(ボイラープレート)
9.署名欄
10.添付書類、別表


George W. Kuney
"The Elements of Contract Drafting" P.25




●まずは型にはめる
上記10項目を頭に入れながら、契約書をドラフトしていきます。
特に、もれがないかどうかに気を配ります。検討した結果、契約書に掲載しないのであれば、それはokです。

●ボイラープレート?
聴きなれない言葉ですね。これは、「定型条項」ということです。準拠法"Governing Law"や裁判管轄"Jurisdiction"、放棄"Waiver"、譲渡"Assignment"などがこれに該当します。契約書上に現れる、レギュラーメンバーともいうべき条項で、ほぼ定型となることからこう呼ばれています。

*ボイラープレートの元の意味は、そのまんま「ボイラー板」です。

●添付書類
日本の法律でも、このような形式を取るものがあります。特に、省令で多いですね(いわゆる「施行規則」)。許可申請の様式を「別表」などとして条文の最後に置いてみたり、指定するサービスや商品を一覧にしたりします。基本契約書を交わす時に、個別契約の注文書の様式や、取引権者のサイン証明書の書式などをおくことがあります。別途定めることも可能です。取引の難易度や相手方との信頼関係で書類作成をするかどうかが決まってくるでしょう。

●「定義条項」の重要性
一つの契約書で2回以上使用する用語を定義します。あまりに一般的なものは定義不要ですが、それを一般的な用語として扱わない時は、定義しましょう。「サーバ」、「店舗」など、特定のものを指すのであれば、その旨明記しなければトラブルを生むことになります。

一つのことばを互いに疑いなく同じ意味で捉えていればいいのですが、そうでないことの方が多いのです。建設工事請負契約で言う「完成」が典型的です。請負人が「完成した」と言い引渡しをしてから、瑕疵担保保証があるとはいえ、発注者は「外壁を直してくれ」と言います。「外壁工事」の定義が違うのでしょうね。

そもそも、商品自体が違うものを指している、もしくはきちんと指定されていないという契約書もありますけどね。みなさんも、一度お手元の契約書をご覧下さい。契約書の中で2回以上使われている用語は「定義」してみましょう。すごく意味がハッキリします。


契約書WEB

No.010 【25-6 正確に、明快に!】契約書のドラフティング25の考え方

●ドラフティングの基本(6/25 正確に、明快に!)

Usually our goal is both precision and clarity.

我々(契約起草者)の目標(goal)は、「正確さ」と「明快さ」である。

George W. Kuney
"The Elements of Contract Drafting" P.48





●正確さ
正確であることは、意外と難しいのです。
例えば、言葉を遣うときに、「及び」と「および」などという漢字・ひらがなの表記ゆれがあれば、見る方は「ちゃんと作っているのか?」と感じてしまいますね。契約書を最初に「本契約」と定義してあるのに、後半部分で「この契約」となってしまうことも、しばしば見られます。

契約書上で使用する用語をきちんと自分の中で定義して、必要があれば定義条項に記載して明確化します。これが契約書というアウトプットの正確さを生み出します。


●明快さ
明快さも重要です。
これについて、実務上、よく感じることがあります。

契約書はセレモニーとなっていることが多くあります。トップ同士が話をして、合意した内容を契約書に反映されていれば、良い契約書ができます。

ところが、契約書を見ると、実に一方的な契約を相手方が要求しているなどということも数多くあります。また、後日トラブルとなる原因の一つに「言葉の意味がわからない」ということもあります。契約時には理解できず、いざトラブルが発生したときに専門家に相談したら、極めて自分に不利な条項が多かったというケースですね。

やはり言葉は明快に、そして内容もすっきり。不要な条項は置かない契約書が美しいと思います。プログラマーの世界でも同じです。


原文はたった一行ですが、意味は非常に重たいフレーズです。


*25個のうち6番目。あと19個。

契約書WEB