2006/05/22

No.009 【25-5 完璧な契約書などない】契約書のドラフティング25の考え方

●ドラフティングの基本(5/25 完璧な契約書などない)

There is no such thing as a perfect document, There are bad documents, good documents, and better documents. Every document can be improved.

完璧なドキュメントなどない。悪いドキュメント、良いドキュメント、より良いドキュメントがあります。どのドキュメントも改善されうる。

George W. Kuney
"The Elements of Contract Drafting" P.48





●完璧にするこは不可博р烽謔ュ使う表現です。「トラブルを絶対に防ぐ契約書など無理」と言います。「ある程度」防ぐことはできるかもしれません。

だからといって諦めるのではなく、取引の実情を勘案して、きちんと互いの意思を反映させた契約書であれば、「improve」されます。

契約当事者の利害が衝突して、いつまでたってもまとまらない契約もあります。これは、たたき台に問題があるのでしょうね。立場が対等であるとき、一方の都合だけで契約書を用意すると、このような事態になることがあります。


*25個のうち5番目。5分の1終了。あと20個。

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No.008 【25-4 早めの対策で問題解決は簡単に】契約書のドラフティング25の考え方

●ドラフティングの基本(4/25 表現を易しく)

It is easier to resolve problems before they happen than after they happen. In drafting contracts we need to anticipate problems and provide solutions.

問題が起こった後よりも、問題が起こる前に解決したほうが簡単。契約書をドラフティングをする際に、問題を予想して、問題の解決策を提供する必要がある。

George W. Kuney
"The Elements of Contract Drafting" P.48





●事例:早い段階での問題解決がベター
非常に身近な例で説明しましょう。

<事案>
あなたの家にセールスマンが来ました。ドアを開けると硬い靴をはさみこみ、玄関に上がりこんで出て行かなくなりました。その後1時間ほど居座られて、契約せざるを得なくなりました。

実際にはもっとひどい話で、祝日に3時間居座られ、脅迫もされたという事例がありました。

<段階1>
これは、まず「ドアを開けない」ことが重要だったのですね。一度玄関に入られてからだと、解決が困難になります。

<段階2>
さらに、契約してしまってからだと、クーリングオフの手続を取るにしても費用も手間もかかります。


●契約書の場合も同じ
ドラフティングの段階できちんとチェックして、予想される問題を挙げておくことが必要です。いつもお客様と話をするときに「取引に対して感じるリスク」を挙げてもらいます。そして、こちらで感じるリスクも伝え、契約書に反映させておくようにアドバイスしています。もちろん、書面に反映させてしまえばいいわけではなく、相手方に了解を得ることが重要です。これは、後出しをすると印象が著しく悪くなります(これは自社にとって不利だとすぐわかる)。だから最初に書いておきたいところです。


また、後から裁判になってしまうと、たいへん手間ですよね。
水際でトラブルを防いでいきましょう。

*25個のうち4番目でした。あと21個です。引き続きお付き合い下さい。

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No.007 【25-3 見た目を易しく】契約書のドラフティング25の考え方

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●ドラフティングの基本(3/25 表現を易しく)

Think like an attorney, but try not to sound like an attorney.

弁護士の様に考えなさい。でも弁護士のように聞こえないように努めなければいけない。

George W. Kuney
"The Elements of Contract Drafting" P.48





●簡単な表現で
小難しい表現を避けて、易しく説明してあげなければなりません。これはクライアントだけでなく、相手方も同じです。

僕も契約書をよく作っていますが、クライアントが相手方に説明できないような契約書では意味がありません。きちんとした合意が得られることが困難になるでしょう。また、用意した契約書の内容が説明できないと、大きく信用を失う結果となるかもしれません。

*25個のうち3番目でした。あと22個。

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No.006 【25-2 代理人attorneyの役割】契約書のドラフティング25の考え方

●ドラフティングの基本(2/25 代理人attorneyの役割)

An attorney is almost always a salesman. We are advocates for our clients whether we are practicing in the courtroom or not. When drafting a contract we are persuading the other party to sign now and to perform voluntarily later, and we are persuading a later court to enforce the contract if the other party does not comply.

代理人(弁護士attorney)はたいていセールスマンのようなものです。我々(代理人)は、クライアントの擁護者であり、それは法廷内で実行しているかどうかを問いません。契約書をドラフティングするとき、我々は次の2点(二者)を説得しようとしています。

(1)現時点で取引の相手方にサインしてもらい、後で自発的に(契約書に従って)行動してもらうこと(相手方)。

(2)取引の相手方が契約を遵守しなかったときに法廷に対し、契約書に効力を持たせるための説得材料にすること(法廷の裁判官)。


George W. Kuney
"The Elements of Contract Drafting" P.48





●弁護士と行政書士
ちなみに、日本の法律上、我々のような「行政書士」は(2)の機能を持ちません。従って、争う可能性の高い契約に関しては、最初から弁護士にドラフティングしてもらうのが良いでしょう。行政書士はトラブルの間に入って問題解決をすることがほとんどできないと言ってもいいでしょう(できるのは内容証明郵便などの文書を作成することくらいでしょうか)。

だからといって、我々が契約書を作らないかというと、それは違います。契約当事者の要望を文面に落としてあげることは重要な役割だと考えています。

その上で、考えられるリスクを洗い出したり、要求と妥協のさじ加減をクライアントとお話ししたりしながら契約書を練っていくのです。

そもそも合意していなければ、どんな契約書であろうとトラブルは起こります。
だから、合意していることを書面にし、取引を開始していただくことが大事になるのです。


*25個のうち2番目でした。あと23個ありますよ。
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No.005 【25-1 平易に読めること】契約書のドラフティング25の考え方

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●ドラフティングの基本(1/25 平易に読めること)
The standard that we should strive to attain in drafting contracts is that a person of reasonable intelligence who knows nothing about the transaction can understand the deal after one reading of the contract.


契約書ドラフティングの基本の一つは、「一定の知性を持っているが、当該取引transactionにつき何も知らないような人」でも契約書を読んだ後に、どういう取引かが理解できるように起草者が努力しなければならないことである。

George W. Kuney
"The Elements of Contract Drafting" P.48




そんな契約書を見たことがあるでしょうか!

できるだけ難しい表現にして、トラップを多くして、とにかく自社を守るような契約書ばかりではないでしょうか。多くの契約当事者に一様に適用される「約款」「規約」などが典型的ですね。


僕の事務所では、補助者に「各条項に説明を入れるように」言っています。一番最初にある「印紙貼付欄」からです。なぜその額となるのか。きちんと理解して欲しいのです。もちろん、税務署に確認を要するような複雑な取引もあります。こういったときは、税務署に確認します(もしくは、お客様にしていただきます)。

お客様に説明できないような文言は使うべきでないと思います(自分がわかっていないということですからね)。難しくても、「これはこういう風に使うものですよ」という慣用表現も多くあります。これも、きちんと説明させていただきます。


他に、24のポイントがあります。
順に見ていきたいと思います。

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No.004 WILLとSHALL&MUSTとMAY

Shall, Will, Must and May

●May
"May" is permissive -meaning the actor has an option of taking an action or receiving a benefit -it expresses a right.

"May"は「許されている」の意味。行為者が行動をしたり便益を得たりする選択肢optionを持っていることを表している。

●Shall
"Shall" on the other hand, means the actor has no choice, he has a duty.

一方"Shall"は、選択肢を持たず、義務を持つのみ。


ex) At or before the closing, the Seller shall deliver the Purchase Price to the Escrow Agent

クロージングの際、もしくはその前に、販売者は(その固有の)販売価格を、エスクロー(手続代行)業者に交付しなければならない


●権利義務は、MayとShallで
Differentiate between rights (permissive) and duties (mandatory). Rights are "May" phrases (tenants may landscape the area adjacent to the patio); duties are "shall" phrases (tenants shall clean and maintain the area around their front doors in good repair). If the word "must" could be substituted, "shall" is appropriate.

権利と義務を区別するために、権利は"May"、義務は"Shall"を使う。
もし"must"という言葉が代替可能であれば、"shall"の方が適切である。



●Willは、どう使うか?
"Will" is predictive but is otherwise similar to "Shall," as it may refer to a duty. When indicating a duty, it is best to stick to "shall" (or "must") and eliminate "Will," however, being predictive, is appropriate when speaking of future events.

"Will"は予想という意味合いがあるが、"Shall"と似ています。それは、「義務」を言及することもあります。「義務」を示す時は、"will"を使用せず、"shall"もしくは"must"を使用するのがベストです。

ただし、将来発生する事象に言及する時で予想されるということを表すときは、"will"を使用します。


George W. Kuney
"The Elements of Contract Drafting" P.36



僕も英文契約書を見ますが、"will"と"shall"が混ざったものがときどきあります。実際に企業でご覧になる方は、区別して読んでいますか?

<ケーススタディ>
相手方A社と自社との契約で、相手から自社にしてもらえること(つまり「債権」)は全て"will"で表現されており、自社が相手に対してすることは全て"shall"になっているという契約書があります。

"will"で書かれた部分が実行されないとき、争っても、相手は「それは"duty"ではない」と主張する可能性が高いのですね。


「英文契約書がわが社にもあるゾ」というみなさん、ぜひ見て下さい。
江戸時代に日本が海外各国と交わしたような「不平等」な契約かもしれませんよ。

No.003 不必要なことばを省く

契約書を作るときに、不必要なことばを省く

Omit Needless Words

by elegant drafting that makes its meaning clear with little effort on the reader's part

George W. Kuney
"The Elements of Contract Drafting" P.39


エレガントなドラフティングによって、読む側が要する努力を小さくし、意味をハッキリさせることができる。



契約当事者が理解できるようなことば遣いが大事ですね。
そうでないと、双方果たして条項を理解して、合意に至っているのかどうかわかりませんからね。

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No.002 署名捺印の重要性(個人編・個人事業者)

個人事業者バージョン。

個人事業って、どのように始めるかご存じですか?

そう、税務署&県税事務所に届出をするのです。
屋号は適当につけることができます。

「適当に」。

類似商号も何も、ないのですね。


さて、個人事業主の相手方と契約する場合、何に注意するのでしょうか。

それは、「相手が誰か」ということ。

××サービス ○田 ○彦さん

これで相手が特定できますか?

何かが足りませんね。

そう、住所です。これである程度人物を特定することができます。


心配なときは、個人の印鑑証明書を添付して、実印で契約書に押印をお願いするのです。


僕は銀行にいましたが、個人事業者との契約で、重要なものは「印鑑証明書+実印」でしたよ。約定書などがそうでしたね。

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No.001 署名捺印の重要性(法人の場合)

法人編。

署名は大事です。
法人の場合、ゴム版で会社名をペタッと押すことがほとんどでしょう。

「○○株式会社」

だけが会社名だと思っていませんか?

契約書の場合、住所・会社名・代表者役名(これ、ポイント)・代表者名+印鑑でセットです。

つまり、


愛知県○○市○○町××番地△
○○株式会社
代表取締役 ○野 ×太       (会社印)

という感じになります。

この会社印、実印・銀行印は誰が保管していますか?
経理の方か社長か、どちらにしても重要なものなので、金庫の中などに入れて大事に保管されているはずです。

ですから、相手方を確かめる場合、この実印が押せる人が契約したかどうかが重要となる場合もあります。法人の印鑑証明書と同じものですからね。

初めての取引で自社の方が立場が上だと、このように相手をしっかり確認する手段として、印鑑が重要となってきます。相手の方が強い場合、「実印と印鑑証明で」なんて言ってしまうと、「ふざけるな」と言われ、取引が成立しなくなってしまうおそれがあるので、よく考えて利用しましょうね。

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